二千十九年八月
二日 いつも通りじゃなくなった毎日が、いつも通りにすぎていく。 傘をささない梅雨ももう何度かすぎていって、このままだと思っていたけどそうでもなかった。 元気だよ、と歯がとれちゃっても平気にしているワンワンに声をかけた。
未明、川まで歩く。そこにつくまでに幾つセーブポイントがあったか忘れた。しょうもない道をひたすら歩くだけ。 叫ぶ女の声を聴きたくなくてイヤホンをつけたけど、すぐに外す。 顔を洗ってから出てくれば良かった。 待ち合わせの場所にはだれもいなかったようにみえたけど、あんたはどう思う? ざわざわもしんともしていないつまんない瞬間。他人の犬が横を通り過ぎて行く。 空気は中途半端にあったかく顔はべたべたしている。セーブポイントで手に入れたパピコをあっという間に吸って、さっさと元の穴に帰った。
三日 ずっと空をとぶ飛行機のなか。何かにひっぱられている自覚はあったりなかったりだけどまあいいか。どんなかってあんまし覚えてない。 そもそもやっちゃうまあいいかは、あのあいつの成分が混ざっているだけという気もする、すぐふざけたりとか。元々あったのかもしれないけどよくわからない。簡単にこれでよかったとは言いたくない。 モグラの穴でひく線とそうでないときの線のちがいがおもしろいので、擬似的に体験できないだろうか。 ひさしぶりにあの人のおしゃべり動画を聴こうかという気がおきてきた。
五日 新品のマシーンを眺めながら時間をつぶすのにもあきて、夏をすきになるためにしたいことをしたり 赤をべちょべちょやったり打鍵音をきいているだけでもう五時の時間だった
七日 きっと今あのときのあの子と同じ顔をしているんだろうなと思って、余計に笑えた
十日 昨日と同じ服と同じ体のままで、いつものコックピットに収まっている。しょうもない事件が起きる。おもしろいことなんてなく、ただただ向き合っているだけだ。 ノートにできたしみが全部思い出させてくれる。あの子はまた名前を変えたらしい。 じつはノートにハートがあるんだ。そっかって言うと思う。ほんとうはよくわかってないんだ。そっかって言うと思う。
十二日 定期的に頭の中にうかぶ言葉ランキング堂々の第一位! 「なんでそんなこと言うんだろう」
十五日 世界一しょうもないピクニックの後で、また知らない言葉を知る。 オリジナルのマークを作っている場合ではない。 いらなくなったヘッドセットがアンノーンみたいな風情で捨てられない。
十六日 決め打ちの火デイ くだらないねぇ、ほんと、ふざけてちんたらしてめちゃくちゃいいのができて。 カツは五分かかることを私は知っている。 言いたいこと言いたいだけ言ってたら寝てなかったりとかなんとか。
二十二日 間違えて買ったラーメンで餃、計186円 何系のお話かはおわるまでわからない
二十六日 同じポーズで突っ立っていたら、いつのまにか生返事しかしていなくて、泣きそうになった。 やせてないのにやせたねって言われるので、背筋を無理矢理伸ばしたりする。十も年下の子の調子を伺う。 ここんところずっと誰かのことばかり考えている。それ今なのかとか思ったりするけど、今でしょって思うからそうしている。 手が止まっている。
三十日 どうってことないはずでしょうが ただ寂しいだけでしょうが、変な匂いをさせている くじゃくじゃになった卵焼きが冷めたおにぎりの中でなじんでいることを忘れてはいないけど私は今そこにいない それだけだってことを何度も自分に言い聞かせている
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